民族と金

カテゴリ:腐敗( 6 )

鐵骨ばかりのビルヂングの

下で二人の男が上を見上げながら話してゐた。
「何てえ鈍間な野郎だッ、建築つて奴あ、一度ケチがつきやあがると、それからそれへと縁起が惡くつて、碌なこたありやあしね、危險なこたあ解り切つてるのに、餘ッ程、ドヂな野郎ぢやねえか‥‥‥」
「何でもふだんから俺あ、のろま[#「のろま」に傍点]な野郎だとおもつてた‥‥‥」
 詰襟の服にゲートルを捲いてる技師らしい男と、アルパカのもぢりみたいなものを、ふわりと上から羽織つた親方らしい男と、鉛色の蹠を見上げて怒罵を浴せてゐた。
 何時? 何處から? どうして? その足は歩きつゞけて來たゞろう。その足は、都會に幸福を求めていつた父の足だ、ブルジョアジイが噛んで吐き出すやうな食物を求める爲に、生涯の血と汗とを拂はなければならないあの父と子供の足だ!
 今に今にあの足は、ビルヂングの鐵骨の上から立ち上つて、何千何萬何億もの足と一緒に、全世界の軍隊よりも[#「よりも」は底本では「よ も」と欠字]歩調を合せて、一つの行進曲を奏するだろう。私の頭の上では、矢ッ張り激しく鋲締機が鳴り喚いてゐる。
 ……私は一體、睡つてゐるのか、覺めてゐるのか‥‥‥‥。
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by tribalmoney | 2005-11-15 16:38 | 腐敗

何時からともなく祖母は姿を見せなくなつた。

病氣でもしてゐるのではないかと思つた。すると製糸工場へ行つてゐる母が、祖母も夫も子供も棄てゝ何處かへ行つてしまつたといふ噂が街中に擴がつた。
 私は祖母に遇ひたくても、彼の家とは往來を禁じられてゐて、どう脱け出してゆく事もできなかつた。それは皆彼の家が餘り貧乏な故にだつた。
 私は毎日、彼の家の頭上にある、[#底本では「、」は「。」と誤記]淨土寺の公孫樹に夕陽の蒼ざめてゆくのを、野の彼方から眺めてゐた。

 祖母はやつぱり病氣だつた。
 もう長い事寢てゐたのだ。暗い空家のやうな家の中に空虚な眼をあけて寢てゐた。
「淋しかあないのかえお婆さん。」
 祖母は無表情で首を動かした。
 そして、水を貰ひたいといふ意味の事を、やつと私は聽きとつた。
 小さな茶碗に、私は井戸から水を汲んで來て飮ませると、祖母は滿足さうに眼を瞑ぢて見せた。
 その日から二三日の後に祖母は死んだ。
 子供の騷々しく遊んでゐる中で、壁の方を向いたきり、それなり死んでしまつた。
 私はたゞ切り倒された枯木のやうに横たはつてゐる屍骸を見たばかりだつた。
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by tribalmoney | 2005-11-13 16:37 | 腐敗

「虱なんか、たけてくると傍(はた)迷惑だよ、

第一着物が臭くなるから、あんな家へいかない方がいゝよ」
「お前が、彼邊の貧乏屋で、かけたお碗でけんちん汁か何か食べてた姿[#底本では「婆」と誤記]を見たものがあるか? もしあればその人はそれつきりお前に愛想を盡かしてるぜ、まるで乞食の子だ、俺なんか沁々[#底本では「泌々」と誤記]お前が厭んなつちやつたぜ‥‥‥」
「夕方になると彼處の乞食婆がね、×ちやんに逢ひたくつて、×ちやんの家の前を幾度も往き來してんだよ、まるで偸人(ぬすつと)みたいな婆あだつて、ほんとかい?」
 皆の揶揄が小さい私の心を寸斷した。
 夕方私が家の窓から往來を覗くと、祖母が向ふの油倉の蔭にかくれて手招ぎをしてゐた。
 私は彼方を見、此方を見ながら、祖母の傍へ駈け寄つていつた。
 始終蜆の貝のやうに爛れてゐる眼のそばへ、くつつけるやうに茶の毛糸の巾着を持つていつて、その中から銅貨を二つ三つつまみ出して私の手のひらに載せた。
 祖母は祖母で村の人の使ひや洗濯をして、僅かな金を得てゐるのだつた。
 それから祖母は、毎日毎日來て、お小遣を置いていつた。私はその祖母の血滴のやうな錢で、家から禁じられてる駄菓子の買啖ひをして、小さい慾望を滿足さした。
 毎晩十二時になると、私は急に夜具を蹴上げて飛び起きた。
「わあつ!」といふ叫びを擧げながら、あらゆる障害物を飛び踰えて、往來へと突進した。危ぶない! 危ぶない!家の者や近所の者は、何處まで駈け出してゆくか解らない私を抱き止めて、また寢床の中へ連れ戻した。私は何にも意識しないで、その儘靜かな眠りを續けるのだつた。
 私はいつも覺めてゐる時も寢てゐる時も、乳母や乳弟妹(ちきやうだい)に呼びかけられてゐるやうで少しもおちつかなかつた。始めは僅かな養育料の爲に繋がれた私達だつたが、とうとう切り放せない一つのものになつてしまつたのだつた。
 そして彼の家の赤貧は、少さい私の重荷になつて、一層私を貧に對して神經質にした。
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by tribalmoney | 2005-11-12 16:37 | 腐敗

それからまた父は行商を止めて

すてきに好い事を始めた。子供達にも好い仕事が與へられた。それは煉瓦工場の土擔ぎだつた。
「今日はちやあや[#「ちやあや」に傍点](父のこと)の辨當を持つてゆくの私だよ。」
「うゝん今日は俺だ。」
「咋日お前が持つて行つたんぢやないか」
「嘘つけ、おら[#「おら」に傍点]はたゞお前に隨いていつたんだ、今日こさ、俺一人でいぐ!」
 子供は大臣のオフイスにでも行つて見るやうに、父の働いてる工場にいつて見たがつた。
 皆で祖母の作つたお辨當を奪ひあつた後、結局皆でぞろぞろと長い松原を歩いていつた。
 野の中に蛇の目傘を擴げたやうな穹窿形の屋根が三つ、青麥の波の上に泛んでゐる。
 そこは、下野煉瓦製造工場。
 子供等は門の中へ入つてお辨當を置いてくると、急いで出て來て川向ふへ廻つた。
 圓い工場の丘を半分抱いて流れてる川の水は、土を搬んでくる小舟の爲に攪亂されて濁つてゐた。
 開け放たれた窓の奧に、高い天井から斜めに廻轉してる調帶(ベルト)の一部が、長蛇のやうに見えてゐた。そこから間斷なく切り出される大きい羊羮のやうな長方形の土塊は屋外に搬び出されると、手拭を冠つた女達の手に、一箇一箇と莚の上に並べられた。
 甘さうな水分を含んだ、しつとりとしたお菓子が、規帳面に並んだ上を、白い雲の集團が煤色の影を落しながら飛んでゆく。
 炎天下に勞作する男女の群を、子供等は何にも知らずに繪のやうに眺めた。その風景は長閑な異國的な情緒さへ私達に傳へた。
 子供等は土擔ぎの眞ッ黒な人夫の群の中から若い父親を見出すと、小鳥のやうに口をあいて聲を揃えて
「お父つつあん――」
 と一齊に呼ぶのだ。二三度呼ぶと、父は對岸の子供の方をチラッと振り向いて、愛情の籠つたむづがゆいやうな微笑を傾けた。
 百姓から行商人へ、それから勞働者へと境遇の變つていつた父の、工場を背景にして働く姿は、どんなに輝やかしく男性的に子供等の瞳へ映つたろう。だが、その古い印袢天の下に穿いた、汗と垢に汚れた白木綿のズボンが、べたべたと父の下半身に絡みついて、それがおそろしく父の足許を疲勞してゐるやうに見せた。
 私は貧しさに沒してゐる間は、自分の貧しさを知らなかつたが、學齡までといふ生家と里親との約束の期限が來て、とうとう私はこの若い貧しい、然し温い父母の懷中から切斷されてしまつた。それは全く血の滲むやうな苦悶だつた。
「×さん、もうあの貧乏家へはいかないがいゝよ、虱が泳いでゐるよ。」
 誰も口を揃えて貧しい父母を侮蔑した。
 さういはれて見ると實際、私の愛する弟妹達の髮の毛には、粉雪のやうに白い細かい虱が根深く喰ひこんでゐるのが眼に見える。
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by tribalmoney | 2005-11-11 16:37 | 腐敗

断食終了

断食瞑想合宿が無事終わりました。
水しかとらない完全断食ではなかったので日常生活への復帰も楽です。
さっそく駅でワカメそばを食べました。
これがえも言われず美味しかったぁ~!

普段は毎回の食事をあまり大切にせずに食い散らかしてることに気づきました。
これからは食に感謝して丁寧にじっくり味わって食べよう。

瞑想はまだまだこれからだ!座法・呼吸法から鍛え直し。

夏休みももうこれでおしまい。さあ明日から頑張ろう!
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by tribalmoney | 2005-10-26 16:36 | 腐敗

断食開始

根府川での断食・瞑想の一日目が終わりました。

完全断食ではなく、野菜ジュースとお茶碗3分の1ぐらいのお粥、わかめの味噌汁、タクアン1切れ、梅干し半分ぐらいにこんぶの佃煮を食べました。
まだお腹空かないけど、明日の午後あたりからキツくなるかな?

瞑想はムーラダーラ、スワジスターナ、アジーナの各チャクラの覚醒呼吸法と瞑想でした。2時間も座っていると足が痛くて痛くて。最後は瞑想どころではなくなってしまいました。

今は爽快。また明日。
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by tribalmoney | 2005-10-23 16:36 | 腐敗